松江市東出雲町の磁器「意東焼(いとうやき)」の企画展が出雲市大社町杵築東、島根県立古代出雲歴史博物館で開かれている。経営不振のため10年間しか操業しなかった窯の作品が並び、来館者の目を引いている。5月20日まで。
意東焼は白地に青で文様を描き、透明な釉薬をかけて焼成した磁器。肥前伊万里出身の職人が製作に携わっていた。1832(天保3)年、松江藩の官営事業として操業したが不採算のため42年に休止し、その後、廃業となった。
元東出雲町文化財専門委員の故周藤國實(くにみ)さんが県に寄贈したとっくりやちょうず鉢などのコレクションと、窯近くの不良品廃棄場所「物原(ものはら)」から出土した皿や茶わんの破片など計約40点が並ぶ。
地元の風景を題材に、島根県奥出雲町と鳥取県日南町にまたがる船通山と斐伊川を描いた杯は薄手で繊細優美な一品。高台内側には窯がある「長歳山(ちょうさいざん)」と製造時期の「天保製」の銘がある。物原から出土した茶わんや皿は日常使いの品も作っていたことに加え、文様などから意東焼を見分ける重要な手がかりになる。
岡宏三専門学芸員は「わずか10年で消えてしまった意東焼の魅力を感じてもらいたい」と話した。
(月森かな子)