自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、政治改革に関する緊急提言を発表した「令和国民会議(令和臨調)」=2月2日、東京都内
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、政治改革に関する緊急提言を発表した「令和国民会議(令和臨調)」=2月2日、東京都内
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、政治改革に関する緊急提言を発表した「令和国民会議(令和臨調)」=2月2日、東京都内

 2月14日の衆院予算委員会。自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を巡って追及が続く中、最大派閥安倍派の前会長を務めた故・細田博之前衆院議長の資金管理団体の「使途不明金」が取り上げられた。

 裏金事件を受け、細田氏側は2月、2020年と22年の「通商産業エネルギー政策研究会」の政治資金収支報告書の支出計292万円を使途不明金として訂正した。質問に立った立憲民主党の大西健介衆院議員は、23年11月に細田氏が亡くなり、最終的に使い道が明らかにならない可能性に触れた上で「非課税の政治資金として認めていいのか」と指摘。確定申告で使途不明金は課税対象となることから「国民の納得が得られるのか」と迫った。

 岸田文雄首相は「適正、公正な税務の実現に努力していると承知している」と述べたが、細田氏以外の事案を含めて国税庁や税務署の税務調査の動きは鈍い。

 安倍派は堀井学衆院議員も使途不明金計1086万円を計上し、訂正した。総務省によると、現行の政治資金規正法では使途不明金として報告書を訂正することの規定はないという。同省の担当者は「われわれは記載が良いか悪いか、本当かうそかどうかを判断する立場にない」と話した。

 

 整合性の確認だけ

 監査体制の強化が課題になる中、過去に設けた仕組みの実効性に疑義が生じている。

 07年に発覚した閣僚の多額の事務所費計上問題を受け、08年に総務省に「政治資金適正化委員会」を設置。ただ、登録された税理士や公認会計士らの監査人が、提出を受けた国会議員の関連団体の収支報告書と領収書の整合性を確認するにとどまる。

 2月の委員会では、裏金事件を踏まえた政治資金収支報告書の訂正が相次いだことを受け、委員から「もう1回監査し直すのか」との質問が出たのに対し、総務省は訂正に関する規定がないことを理由に「必要はない」と答えた。

 やる気図る試金石

 裏金事件で明らかになったのは疑惑を積極的に調査する機関がないことだ。

 民間の政策提言組織「令和国民会議(令和臨調)」は2月、政治改革の緊急提言を発表。政治資金を監督する第三者機関「政治資金委員会」の設置を提唱した。監査や現地調査の実施のほか、違反行為に行政罰を科すなどの権限を与えるべきだと訴えた。

 第三者機関の設置は、政治資金の使い道などの透明性確保や罰則強化につながる可能性がある。委員からは、使い道を明らかにする必要がない「政策活動費」について、一部の公開範囲を第三者機関に限定する案が上がる。議員に連帯責任が課せられる「連座制」の適用基準や悪質性の判断をあおぐ想定もある。

 取りまとめに当たった東京大の谷口将紀教授は「政治資金の規正を可能にするため必要な機関だ。どこまで踏み込めるかが(各党の)やる気を図る試金石だ」と強調する。

 第三者機関の設置は立憲民主党や公明党など4党が主張。自民の中間取りまとめに言及はない。具体的な議論はこれからだ。

 課題は公平性や独立性をいかに確保するかだ。22年分の政治資金収支報告書を提出した政治団体の数は5万8164団体に上る。チェックに人員が割けるのかどうかも実効性を確保するために重要になる。

 国民が疑念を持たないよう政治家がルールを守ることが大前提だが、今回の裏金事件を踏まえると、抑止力にもつながる監査機能の充実は必要と言わざるを得ない。4月に島根1区を含む衆院3補選を控える。「政治とカネ」の問題にどう対応するか。国民の視線は全ての政党に向けられており、再発防止に向けて実効性のある改革を進めなければ政治不信はさらに深まる。

 (東京支社・原田准吏、政経部・白築昂が担当しました)