首相官邸で記者団の取材に応じる岸田首相(左)。自民党岸田派の解散について「検討している」などと話した=18日夜
首相官邸で記者団の取材に応じる岸田首相(左)。自民党岸田派の解散について「検討している」などと話した=18日夜

 政治とカネの問題で自民党が大きく揺れている。派閥の政治資金パーティー裏金事件が飛び火すると、岸田文雄首相は岸田派の解散を「検討している」と表明し、衝撃が走った。「検討する」との答弁を重ねて〝検討使(けんとうし)〟とやゆされるが、本気のようだ▼6年前、故・竹下亘元復興相が会長に指名され、竹下派(現茂木派)の復活が決まったパーティーを取材した際、当時は党政調会長だった首相のスピーチを数メートルの距離で聴いた。声に抑揚がなく、内容が頭に入ってこず、言葉で人の心を動かす政治家ではないと思った▼今回の表明も淡々としていたが、覚悟を感じた。世論調査で政権の支持率が20%台で低迷し、捨て身で大勝負に出たのだろう。他派閥に波及し、安倍派と二階派も解散を決めた。決断が政治の信頼回復につながるのか、それとも大きな亀裂を生むのか。今後の政局を占う衆院島根1区補選(4月16日告示)にも影響する▼首相や自民党が追い込まれるほど、存在感が増す政治家がいる。国民人気が高い石破茂元党幹事長(衆院鳥取1区)だ。党内で物言う姿勢にアレルギーがある一方、「国民と意識が近い石破氏がいるのは党の強さでもある」との声も聞かれる▼派閥をなくせば問題の根本が解決するわけではない。首相が検討使から脱却し、指導力を発揮して国民が納得する対策を講じなければ「石破カード」を切ることが現実味を帯びる。(添)