雲南市加茂町出身のラトレッジ(旧姓・青木)麻由子さん(49)=東京在住=と、友人で米国人のアリ・ビューフォードさん(44)=同=が共同事業者となり、島根県奥出雲町の「雲州忠善刃物」の包丁を外国人向けに販売している。職人が手掛ける包丁は評価が高く、2人は「たたら製鉄を背景にした島根の名品を多くの人に知ってほしい」と売り込んでいる。 (白築昂)
たたら製鉄が盛んだった奥出雲町では、鉄を使った農工具や刃物が生産されてきた。忠善刃物は明治期に操業を始め、県の「ふるさと伝統工芸品」に指定。町内の工房で川島久忠さん(83)が作っている。
2人は川島さんの包丁を「Jikuu(時空)」のブランド名で販売。刺し身、出刃、三徳、菜切りの4種をそろえ、柄を新潟県の業者に別注し、包装箱に手入れ方法を英語で記したカードを添えた。1万数千円程度に価格設定し、アメリカを中心に購入者の9割は外国人という。
米国での留学、就職を経て米国人と結婚したラトレッジさんは、都内で子育てをしながら島根に関わる仕事ができないか考えていた。Jikuuの立ち上げは2017年夏。アリさんら友人家族と島根を旅行した際、外国人が忠善刃物の包丁の切れ味や軽さに驚く様子を目にしたことがきっかけだった。
忠善刃物に直接交渉して取り扱いを始め、外資系企業の駐在員や大使館関係者らに「職人が手作りしている」「島根はたたら文化が根付いている」とPR。口コミで評判が広がった。
アリさんは「とても切れ味が良く、メンテナンスのしやすさは現代の生活に適している」と太鼓判。ラトレッジさんは「他県では伝統工芸に魅せられた外国人が次の担い手になった例もある。Jikuuを通じ奥出雲でもそんな動きを起こしたい」と話している。
世界に向けて魅力を発信する2人に、忠善刃物の川島宣江さん(62)は「誠心誠意取り扱ってくれてとてもうれしい。これからも心のこもった商品を作り続けていく」と期待を込める。
Jikuuのホームページアドレスは、https://jikuujapan.com














