「弱小チーム」「とにかく勝てない」。OBが勝利と縁遠かった歴史を自虐的に振り返る島根県立三刀屋高校(雲南市三刀屋町三刀屋)のサッカー部が近年、県大会で好成績を残している。2022年の県選手権で創設53年目にして初の8強入りを果たすと、23年度は県総体と県新人戦でベスト4に進出。かつて県大会で30点差の大敗を喫した姿からは想像すらできない活躍ぶりだ。初の全国大会出場に期待する声も高まっている。

雲南市はサッカーが盛んとは言えない土地柄だ。三刀屋高校サッカー部には、中学時代に競技を経験した選手が少なく、県大会で1、2回戦敗退を繰り返してきた。
生徒会誌によると、1970年に同好会として発足し、その後、部活に昇格した。半世紀以上の歴史があるが、多くのOBが「3年間、県大会で一度も勝ったことがない」と振り返るほどだった。
OBの渡部暢之さん(50)=雲南市木次町下熊谷=も悲哀を味わった世代の一人。高校時代、中学校で競技経験があったのは1人だけで「素人プレーで対戦相手に笑われながら試合をした」と苦々しく思い出を語る。他の部活と比べて影が薄く、今もサッカー部の話をすると「うち(三刀屋高)ってサッカー部あったけ?」と驚きながら聞き返されることも少なくない。
部員不足に悩まされ、2017年の県選手権では優勝した立正大淞南に0ー30で敗れる憂き目も経験した。
■部員構成に変化、ユニークな指導
潮目が変わったのは21年度。...