会場で配られた資料の写真には、2人の子どもの痛々しい姿があった。1人は全身にやけどを負い、痛みを抑える青い特殊なマスクを頭からかぶってダンスコンクールに出場した少年。もう1人は左脚を失い涙する少女が義足を装着し、新体操の練習を再開した姿。ともにロシアとの戦火がやまないウクライナで負傷した。
先日、東京都内で講演したウクライナのコルスンスキー駐日大使はこの写真を紹介。「子どもたちの勇気を見ると、私たちは諦めることはできない。必ず勝ってみせる」と語気を強めた。
気持ちは痛いほど伝わってきたが、気合や根性で勝てるものでもあるまい。大使が「数十倍の戦力を持つ」というロシアに抵抗できているのも、西側諸国の支援があればこそ。とはいえ、ロシアの侵攻開始から2年が過ぎ「支援疲れ」も指摘される。
戦闘終結に向けた和平交渉も選択肢の一つだろう。ただ、ロシアによる侵攻で多数の民間人が殺害され続けている現状を踏まえ、大使は「このような相手とは交渉できない」と訴えた。終息は見通せない。
ここに来てウクライナ南部でロシアが占拠している欧州最大のザポロジエ原発への無人機攻撃を巡り、両国が非難合戦を繰り広げている。恐れるのが、戦闘に巻き込まれて大事故が発生し、放射性物質が放出される事態に陥ること。身体や心に痛手を負い涙する子どもたちの姿は、もうたくさんだ。(健)