「スクリーマデリカ」
「スクリーマデリカ」
「ギブ・アウト・バット・ドント・ギブ・アップ」
「ギブ・アウト・バット・ドント・ギブ・アップ」
「スクリーマデリカ」
「ギブ・アウト・バット・ドント・ギブ・アップ」

 英バンド「プライマル・スクリーム」は、1990年代に目まぐるしく作風を変えた。時代を生き抜くための戦略的な手法というよりも、バンドの中心にいたボビー・ギレスピーの音楽的志向の変化が、そのまま作品に反映された印象だ。

 アルバム「スクリーマデリカ」(91年)はロックとダンスミュージックが融合。溶けて流れたようなジャケットのイラストは、酩酊(めいてい)したデザイナーが「水滴」を描いたものだという。「ギブ・アウト・バット・ドント・ギブ・アップ」(94年)で古き良きアメリカンロックやファンクに傾倒。「バニシング・ポイント」(97年)は70年代の同名カルト映画から着想を得たといい、エフェクトがかけられ、リズムなどを強調したダブというジャンルだった。ボビーの極私的な「かっこいいと感じたもの」が、時代の空気感とシンクロしていた。

 作風が変わっても、サウンドの根底にあったのは多幸感。90年代の作品群は、ラブ&ピースから思想の部分が抜け落ちて、幸福なバイブスだけが残ったような感覚が共通していた。

 「ロックス」「ムーヴィン・オン・アップ」「ハイヤー・ザン・ザ・サン」など多くの名曲は、時に攻撃的に、そして包み込むような優しさにあふれたボビーの歌声によって成立していた。(銭)