江戸時代以降、現在の神戸市から東に広がる「灘五郷」は、やや酸の強い辛口の日本酒で知られる一大生産地となる。その歴史を菊正宗酒造記念館で聞いた。
「上方から船で運ばれた江戸への『下り酒』。19世紀には江戸で消費される酒の8割を占めました」と学芸員の井内雅巳さん。灘の酒が名声を博した要因は立地にある。
まず酒造りに適した良質の水だ。六甲山からの伏流水を使った。特に1840年に見つかったとされる「宮水」はカルシウムなどを多く含む硬水。糖分をアルコールに変える酵母の栄養が豊富なためアルコール度数が高く、より辛口となった。
次が急流に設置した...