全国の書店員が最も売りたい本を投票で選ぶ「2024年本屋大賞」に、宮島未奈さん(40)の小説『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社)が選ばれました。
滋賀県の県庁所在地・大津市を舞台に、真面目でわが道を行くヒロイン、成瀬あかりの中高生時代を描いた青春小説です。
マイペースに生きている成瀬は、閉店が決まったデパート西武大津店に毎日通ってテレビ中継に映ると言ったり、中学生で漫才コンテストの「M-1グランプリ」に出場したり、高校入学時に実験のため丸刈りにしたりと、大胆でちょっと変わった女子生徒。「200歳まで生きる」と堂々と口にし、日頃からいろいろと種をまいておくのが大切だという考えの持ち主で、たとえ目標に届かなくても落ち込んだりはしません。
彼女を取り巻く登場人物たちも、目標に到達するまでの過程で成瀬が見せる言動にどんどん引かれていきます。それは本を手にした読者も同じはず。「成瀬のような生き方ができたら、どんなに楽しいか」と憧れる人も多いことでしょう。
作者の宮島さん自身も、ちょっと変わった経歴を歩んでいます。静岡県出身で小学生の頃、作文を褒められたのをきっかけに小説家に憧れを抱きました。
大学卒業後、公務員の道を選び、働きながら好きな小説を書いていましたが、24歳の時、三浦しをんさんの小説『風が強く吹いている』を読み、自分の力不足を痛感。書くことをやめてしまいました。
その後、結婚と同時に公務員を退職。夫の仕事の都合で大津市に移り住み、専業主婦の傍ら在宅でライターの仕事をしていたところ、森見登美彦さんの小説『夜行』を読んで、小説をもう一度書いてみたくなり、それが今回の本屋大賞につながりました。回り道をしながら、夢をかなえたのです。
小さな頃に抱いた憧れをずっと胸に抱きながら、夢をかなえた人が山陰にもいます。バスケットボールBリーグ1部(B1)・島根スサノオマジック主将の安藤誓哉選手(31)です。
幼い頃、母親が録画していた米プロバスケットボールNBAの映像を見て、華麗なプレーを披露するマイケル・ジョーダン選手ら黄金期のスターたちに憧れたのが、競技を始めるきっかけになりました。
安藤選手のプレーに憧れてボールを手にした子どもたちが将来、スサノオマジックの選手として華麗なプレーを見せてくれる日が来るかもしれません。
昨年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では、決勝の米国戦を前にした円陣で日本代表の大谷翔平選手(29)が仲間に呼びかけた「憧れるのをやめましょう」という言葉が話題を集めました。
確かに対戦相手に憧れていては、それを乗り越えることはできないでしょう。ただ、それは米大リーグでも超一流選手に位置付けられる大谷選手だからこそ言えること。日本だけではなく、米国にも「世界の二刀流」に憧れる子どもは大勢います。
未来を築く子どもたちへ。憧れを大切に育てて、夢の実現を目指してください。
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「こどもの日」に合わせて、いつもより平易な言葉で記事を書いています。