「オンライン立ち会い」のリハーサルで、投票の様子を確認する鳥取県智頭町の職員=9日、智頭町役場
「オンライン立ち会い」のリハーサルで、投票の様子を確認する鳥取県智頭町の職員=9日、智頭町役場

 6月4日告示、同9日投開票の鳥取県智頭町の町長選と町議補選(欠員2、定数12)で「オンライン立ち会い」の導入が予定されている。選挙の投票所に必要な立会人の役割をカメラやパソコンを通じて遠隔で担えるようにする仕組み。総務省によると、投票立会人の業務のオンライン化は全国初になるという。

 町長選は現職のみが出馬を表明。町議補選も欠員を上回る立候補があるかは見通せず、無投票で実際に稼働しない可能性もある。ただ、山陰両県でも顕著になっている選挙の投票率低下にブレーキをかける一助として全国の注目を集めるだろう。

 公選法は投票所の立会人について、有権者から2人以上5人以下を選任しなければならないと規定している。

 しかし、人口減少の影響で立会人を確保できず、投票所を統廃合するケースが全国で相次いでいる。県内ではピークだった1996年衆院選の581カ所が、2023年統一地方選では359カ所に減少した。

 投票率も低下傾向。鳥取県の衆院選小選挙区で比べると、1996年は67・45%だったが、直近の2023年は58・16%まで下がった。社会情勢による関心度の濃淡や当日の天候といった要因はあるものの、投票所の減少が、距離が遠くなり交通手段の確保が難しい高齢者らの足を遠ざけているのは確かだ。

 こうした状況を踏まえ、県は立会人の不足で投票所が減少する事態に歯止めをかけるため、2月にオンライン化の推進を表明し、導入を目指してきた。

 当初は「立会人は現に立ち会うことを想定している」と否定的な見解を示していた総務省も4月末、(1)少なくとも1人は投票所内で立ち会う(2)オンラインによる立会人は、投票所全体の様子を把握できるようにする(3)通信障害などが生じた場合に速やかに別の立会人を選任できるようにしておく―といった6項目の留意点を県に通知し、オンライン実施を事実上容認した。〝有権者ファースト〟の視点に立てば、当然の成り行きだ。

 実際に選挙戦になるかは不透明だが、智頭町は町長選と町議補選で、6月9日の投票所7カ所のうち1カ所と、同5~8日に町内を巡回する通信機能を備えたワゴン車を使った移動式期日前投票で、オンライン立ち会いの導入を予定している。

 本番に先立ち、今月9日には町内でリハーサルを実施。移動式期日前投票所となるワゴン車に立会人役1人とカメラを内蔵した専用端末を配置し、町役場ではもう1人の立会人役がモニターに映し出された投票の様子を監視した。県の依頼でリハーサルに参加した選挙制度実務研究会の小島勇人理事長は「総務省が通知した要件に沿った形でできている。全国にとって今後の試金石になる」と評価した。

 思えば、日時を限定してワゴン車で周回する移動式期日前投票所は、投票所統廃合の代替案として浜田市が16年参院選で導入したのを契機に全国へ広がった。総務省によると、21年衆院選では同市内の9カ所で開設。対象地域の有権者107人に対し、68人が投票したという。

 それに続いて〝山陰発〟となる智頭町のオンライン立ち会いも当然、全国へ拡大すべきだ。投票環境の整備を怠り、有権者を置き去りにしてはならない。