「ヤマタノオロチ」のために命を落とした娘たちがよみがえる-。出雲神話と雲南市の名所・赤川のホタルを融合させた絵本「ほたる姫」を、同市大東町仁和寺の農業松田勉さん(82)が制作した。同市に生息するコウノトリも登場し古里の豊かな自然を伝えている。
松田さんは子どもの頃に赤川でホタルを捕って遊び、旧大東町職員時代にはホタルの町記念物指定にも関わった。住民有志でつくる「赤川ほたる保存会」の一員として、繁殖環境の整備にも取り組んでいる。絵本の制作は、大東町のホタルの魅力を広く伝えようと思い立った。
物語は出雲神話のオロチ退治に着想を得た。神話では、7人の娘を大蛇に奪われた老夫婦に出会ったスサノオノミコトが、最後に残ったクシナダヒメを救う。松田さんは「7人の娘が浮かばれない」と考え、7人の魂がよみがえり、大地や水、風、春夏秋冬の7色の精霊として、赤川のホタルや農作物の成長に恵みをもたらすという設定にした。
命を再び授かった妖精たちが、雲南市内に飛来する国の特別天然記念物・コウノトリの背に乗ってやって来るストーリーにするなど地域の特色をふんだんに盛り込んでいる。松田さんは「大自然と命を育むことの大切さが伝わればうれしい」と話した。
文芸社から出版。A5判のカラー23ページ。1100円。(山本泰平)