多くの釣り人が一度は憧れるであろうプロ。その道を志し、プロアングラーの上畠克久さん(47)=出雲市在住=の一番弟子として活動する男性がいる。中出善哉さん(26)=松江市在住=は理容師として働く傍ら週2~5日は海へ行き、エギをしゃくってアオリイカを狙う。「エギングの楽しさやこつ、マナーを伝えたい」とプロを夢見る。

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 祖父が船釣りをしており、小学校中学年の頃から沖に出て白イカ釣りなどを楽しんだ。エギングを始めたのは19歳。動画サイトでアオリイカを釣る動画を見て、陸からでも釣れると知り興味を持った。

 秋シーズンの中、早速漁港に向かうと、わずか2投目で600グラムのサイズを釣り上げた。当たりの感覚は分からなかったが、追尾もあり「めちゃめちゃ興奮した」という。

 翌春には根に引っかけてエギを1日に7、8個なくした日があったが、それでも心が折れることなく粘り続け、1キロ超えをキャッチ。徐々に技術を身に付け、2022年春には10分近い格闘の末、自己ベストとなる3キロの超大型を釣り上げた。

中出善哉さんが釣り上げた自己ベストとなる3キロのアオリイカ=2022年5月、松江市内

 一般的に難しいと言われる春のエギングで、どうすればもっと大型と出合えるのか。日々考える中で、プロへの意識も同時に芽生え始めた。小学生の頃から面識のあった上畠さんを思い出し、今年3月に電話で「プロになるにはどうしたらよいですか」と相談した。「誰でもなれる訳ではないが、頑張るならアドバイスするよ」と返事をもらい、その場で弟子入りを志願した。

 今月には地元釣具店で、上畠さんが所属する釣り具メーカーCRONO(クロノ)のイベント出店に同席した。来場者にアドバイスする上畠さんの姿を見ながら知識やプロとしての振るまいを学び、自身もお客さんとのコミュニケーションを楽しんだ。
 

釣具店で開かれたイベントで製品をアピールする上畠克久さん(左)と中出善哉さん=出雲市渡橋町

 プロを目指すには何が必要か-。上畠さんは「釣りに対する向き合い方」を挙げる。

 上畠さんは若い頃から県内外で開かれた各地の大会に参加し、さまざまなフィールドで釣りを経験。ポイントごとの特徴を見極め、状況に応じた対応力が身に付いたという。

 実際、プロとして活動する人は多数存在する。ただ、その中でさらに実績を残して上り詰めるには、単に「好き」だけでは足りない。上畠さんは「釣りはあくまで遊びだが、だからこそより楽しむためにはどうすればよいか考えることが大事だ」と説く。

アオリイカを釣り上げ、とびきりの笑顔を見せる中出善哉さん=2024年5月、出雲市内

 メーカーのスタッフになることができれば、製品開発に携われるかもしれない。自分が得意とするスタイルに合わせてロッドのプロデュースもできるだろう。釣りに対してさまざまな角度から経験や実績を積み、上達しようと一生懸命になる姿勢がプロへの道を切り開く。

 「上畠さんの背中を見ながら全力で頑張る」と中出さん。「釣り愛」にあふれるアングラーが、尊敬する師匠と共に島根をエギングで盛り上げる。

=おわり=

(藤原康平)

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上畠 克久氏


<プロフィル>
うえはた・かつひさ 出雲市生まれ。釣り具メーカーCRONO(クロノ)のプロスタッフやUNITIKA(ユニチカ)のフィールドテスターなどを務める。アオリイカの自己ベスト(重量)は船釣りで4・2キロ、おか釣りで3・6キロ。47歳。