島根県内への企業誘致活動で突出した結果を出した営業マンがいる。名古屋市熱田区の岡野正美さん(77)は2003年から20年間、県の委託を受けた「企業誘致専門員」としてIT企業や製造業など中京圏の企業計12社の誘致を実現し、今春勇退した。「誘致のレジェンド」とも称される岡野さんに営業のこつとは何かを聞いた。
岡山県出身でもともと商社に勤務し、サウジアラビアやイラン、シリアといった中東諸国やアフリカ各国を渡り歩いた。家族の体調不良などで53歳で退社。日本で腰を据えて営業力を生かした仕事がしたいと、千葉県の企業誘致営業を経て島根県の専門員となった。

はじめの10年は種まき時期だ。毎月40社を回り、災害リスク分散や島根のIT産業振興を背景に、11~13年度で6件の誘致を実らせた。この間、県全体の誘致件数は15件で岡野さんの実績は飛び抜けていた。
異例の契約延長を重ね、引退を決めた23年末までに、こたつヒーターで国内8割のシェアを持つメトロ電気(愛知県)や、健康食品製造の三協(静岡県)など多くの企業誘致に関わり、積算の投資規模は約40億円、新規雇用者230人を創出した。
その働きぶりに県職員として長く触れてきた県東京事務所の大谷幸生所長は敬意を込めて岡野さんを「レジェンド」と称する。

営業の心得とは何か。
問うてみると「よいことばかりじゃない。空振りもたくさん」との返答だった。謙遜交じりだが、失敗を先に口にするのは「無駄な訪問は絶対にない」との信念の裏返しでもある。
自身に課した訪問ノルマ(月40社)を繰り返し、色よい結果が出なくても15年以上も通った社もある。「(空振りでも)その都度が学びになり、自分の引き出しを増やし、将来の誘致につながると思ってきた」と振り返る。
アポイントを取る際は、一般的に総務や秘書に電話する場合が多いが、訪問は経営トップに行くのが大原則だと決めている。例えば、...