植物学者の牧野富太郎(1862~1957年)が全国で植物標本を収集する際に、各地の新聞に挟んで保管していた、と先日の当欄で紹介した。新聞紙の活用例の一つだが、意外な用途はまだあった▼松江市にある島根大付属幼稚園で同園の年長児と、小学1年に当たる同大付属義務教育学校前期課程1年生の交流授業を見学した。園児1人と児童2~3人が一組となり、自己紹介に続いてゲームコーナーへ。そこで先生が取り出したのが本紙だった▼ゲーム名は「新聞じゃんけん」。組ごとに広げた新聞紙の上に立って先生とじゃんけん。負けるたびに新聞を折り畳み、最後まで全員が立っていた組が勝ちになる。狭いスペースで4人がくっついたり、児童が園児をおんぶしたり。幼小の垣根を越え、笑顔ですぐに打ち解けていた▼入学したばかりの児童が学校生活に適応できない「小1プロブレム」が問題になっているという。解消に向け、文部科学省は「幼保小の架け橋プログラム」を掲げた。平たく言えば幼稚園、保育園と小学校が話し合ってカリキュラムをつくり、スムーズな接続を図るという方針だ▼とはいえ「言うは易(やす)し、行うは難し」。学園組織の島大付属は異例で、「小学校は忙しいから」などと連携をためらう園も多いようだ。こうした現状を紹介し、解決策を探っていく。それこそが新聞本来の役割なのだ、と改めて気を引き締めた。(健)