高木奈美さん
高木奈美さん
高木奈美さん

 災害時に小さい子どもを連れて避難する場合、どんなことに気を付けたらよいのか。産前・産後の母子をサポートする「NALU助産院」(雲南市木次町里方)の助産師、高木奈美さん(44)に、持参する物や子どもと避難所で過ごす際の注意点を聞いた。 (増田枝里子)

 必ず携帯する物として高木さんが挙げるのは、母子手帳と子どもの健康保険証。いざというときに必要になる。

 避難所で気になるのは授乳。ストレスで一時的に母乳量が減ることがあるが、しっかりスキンシップをし、頻回に授乳すれば母乳量は回復する。諦めずに吸わせることが大切という。授乳する際に周囲の目が気になることもある。授乳ケープなど隠せるものを必ず持参しよう。

 普段母乳だけを飲む子に、災害時だからとミルクを飲ませ続けると、母乳を飲まなくなったり、母親が乳腺炎になったりすることがある。自身の体調をみながら、母乳も吸わせよう。授乳中は特に、母親自身の水分補給も意識する。

 ミルクの場合、普段飲んでいるミルクを多めに用意する。哺乳瓶も忘れずに。哺乳瓶の煮沸消毒ができない事態に備え、使い捨ての哺乳瓶や、紙コップがあれば安心だ。紙コップを使った授乳は、赤ちゃんを立てて抱っこし、コップが下唇の上に軽く触れ、コップの縁が上唇の外側に触れるようにする。注ぎ込まないで、なめさせるようにするとうまくいく。

 離乳食期の子は、普段食べ慣れているレトルト食品を3日分持参する。食物アレルギーのある子は、どの食べ物が食べられないのかを明記した自作のカードを身につけさせるなどして誰にでも分かるようにすることが大事だ。

 おむつや着替えは最低3日分を用意する。余裕があれば古タオルとポリ袋を多めに持参すれば「即席おむつ」も作れる。材料は持ち手のあるポリ袋(小さすぎないサイズ)とタオルなどの布類。ポリ袋の両側面と持ち手の上部をはさみで切って広げ、中に布を敷いて持ち手部分をしっかり結ぶだけ。生理用ナプキンとしても使える。

 普段飲んでいる薬や、体拭きもできるウエットティッシュ、両手が空けられるように抱っこひももあるといい。抱っこひもがないときは、前をファスナーで開ける上着を着て、その上にベルトやひもなどを腰にしっかり巻き付け、上着に赤ちゃんを入れ、抱っこの姿勢に。体に赤ちゃんを密着させ、ファスナーを閉じれば、体への負担が少なく抱っこができる。ただしこれができるのは首が据わってからの赤ちゃんだけなので注意しよう。

 入浴ができないときは、おむつ替えのときに「おしも」をお湯で流すなどして清潔を保つ。

 おむつ外しトレーニング期の子は、慣れない場所で失敗することも増えるかもしれない。非常時だから、初めからおむつをはかせて行くといった対応をしよう。避難所では子どもを1人でトイレに行かせないよう注意も必要。男女問わず性被害に遭う可能性もあるからだ。

 高木さんは「今回のような大雨は事前に備えがしやすいが、地震などは予測しづらい。これを機に避難バッグを改めて用意し、子どもの成長に合わせて中身の更新をしてほしい」と備えを呼び掛ける。