松江藩の鉄師を務めた櫻井家の歴史と文化を紹介する可部屋集成館(島根県奥出雲町上阿井)で、夏季展「南画家・田能村直入とその一門」が開かれている。田能村が櫻井家に滞在した際、描いた掛け軸などが並び、来館者がじっくり鑑賞している。
田能村直入(1814~1907年)は、幕末から明治にかけて活躍した南画家。櫻井家には公立美術学校の設立資金を調達するために訪れたという。1878年から79年にかけて約10カ月間滞在し、当時の櫻井家の様子や奥出雲の風景を描いた。
櫻井家や鍛冶屋のにぎわいを捉えた「内谷真景」は12枚の絵と散文で構成され、人々の営みや周囲の景観を月別に紹介している。
「呑谷瀑布図」は三幅対の作品。櫻井家近くの滝の源流と下流を描くほか、当主の案内で登山した様子などを文章で残している。直入の弟子やひ孫の作品もある。
尾方豊専門員は「絵そのままの景色が現在も残っている。庭園や周辺の散策も楽しんでほしい」と呼びかけた。
9月16日まで。集成館と庭園の共通券は大人千円、大学・高校生650円。小中学生450円。月曜休館。
(山本泰平)