迂回路付近に待機している日御碕分団の小型動力ポンプ付軽積載車=出雲市大社町日御碕
迂回路付近に待機している日御碕分団の小型動力ポンプ付軽積載車=出雲市大社町日御碕

 出雲市大社町日御碕地区で、火災が発生した場合の対応を地元関係者が不安視している。県道崩落で市消防本部の消防車両が火災現場に駆け付けられず、消火対応が制限されてしまうためだ。同本部は資機材を事前投入して態勢を整え、住民に一層の火災予防を呼びかけている。

 地区内には消防団が持つ放水ができる小型動力ポンプ付軽積載車が常時4台配備されているが、本部が持つ消防ポンプ車に比べて消火能力は劣る。

 初期消火は地元の消防団に対応が求められるが、孤立した地区内には約10人の団員しかいないのが現状。さらに日中には地区外に勤務する団員も多く、不安が募る。現場を指揮することになる日御碕分団日御碕部の野津範人部長(54)は「不安はあるが、地区内にいる団員で緊急時に対応するしかない」と話す。

 同分団の小田雅美分団長(54)は、崩落現場より市街地側に住み、現場に駆け付けるのに時間がかかる。住宅密集地がある日御碕地区内での火災を警戒しつつ「火災を起こさないように住民に呼びかけたい」と、市に対し防災行政無線などでの啓発を求める。

 市消防本部は、県道の崩落を受け、火災に備えた態勢を検討。12日に持ち運び可能な小型動力ポンプ2台や放水ホースなどの資機材を地区内の消防団格納庫に事前投入し、緊急時の対応態勢を整えた。

 本部の消防隊員は火災発生時、消防車両で道路崩落現場付近まで移動し、私有地の迂回(うかい)路を徒歩で渡り、地区内に入る。消防団の軽積載車4台のうち2台が孤立地区側の崩落現場付近に常置しており、車両に乗って火災現場に向かう計画を立てる。

 火災の状況に応じて人員や装備を追加する考えで、事故などで救助が必要になれば、エンジンカッターなど必要な機材を持ち込んで対応する。警防課の手銭俊貴課長は「普段の火災予防により一層努めてほしい」と呼びかけている。(片山皓平、白築昂)