住民と打ち合わせを重ねる園山暢男センター長=出雲市大社町宇龍、日御碕コミュニティセンター
住民と打ち合わせを重ねる園山暢男センター長=出雲市大社町宇龍、日御碕コミュニティセンター
高齢者宅を訪問し、声をかける象谷五十美さん(左)=出雲市大社町宇龍
高齢者宅を訪問し、声をかける象谷五十美さん(左)=出雲市大社町宇龍
住民と打ち合わせを重ねる園山暢男センター長=出雲市大社町宇龍、日御碕コミュニティセンター
高齢者宅を訪問し、声をかける象谷五十美さん(左)=出雲市大社町宇龍

 出雲市大社町日御碕地区と市街地を結ぶ唯一の県道が崩落し、16日で1週間がたった。地区内には車両の乗り入れができず、物流や医療に影響が出る中、住民同士の「共助」で困難を乗り越えようとする動きが広がっている。かねて地域の連帯が強く、日頃から防災への備えを共有してきた日御碕地区。奮闘する住民の姿を追った。

 住民と行政の橋渡し役として奮闘するのが、日御碕コミュニティセンターの園山暢男センター長(61)だ。県道が崩落した9日夜は、センターで避難者を受け入れて一夜を明かし、その後は交通手段の確保や物資の受け入れなどの調整に取り組んできた。この1週間は「振り返る余裕もない」ほどだったという。

 16日も燃えるごみの臨時集積場の確認、地区の防災担当者との打ち合わせ、地区防災対策会議…。合間には来客が訪れ、行政や金融機関への連絡もこなす。スケジュールは分刻みだ。住民の一人は「体は大丈夫なのかと心配するほど熱心で頭が下がる」と感謝する。

 崩落現場は出雲市街地から日御碕に向かう途中の県道。道路復旧の見通しは立っておらず、車両は通れないが、現場付近の私有地を歩いて迂回(うかい)できる。

 この1週間で崩落現場から市街地に向けてのバスが運行され、子どもたちの通学も始まった。園山さんは「助け合う風土が日御碕地区にあったからこそ」と住民への感謝を忘れない。近所の人が自主的に独居の高齢者を気にかけたり、燃えるごみの運搬でトラックを所有する人が率先して車を出すと言ったり…。災害を機に絆が強まっていると実感する。

 崩落現場を迂回する仮設道路の設置や、打撃を受けた観光業の立て直しなど課題は山積しているが「これまで以上に地域で支え合うことが大切になる」と前を向いた。

 「お変わりはないですか」。独居の80代女性宅に民生委員の象谷五十美さん(67)の声が響いた。235世帯548人が暮らす日御碕地区の高齢化率は52・2%。大雨後、地区内を1軒ずつ回って体の具合を聞き、声をかける。43年間看護師として勤務して2022年12月に民生委員となり、地区の120戸を担当する。この1週間で12戸を回った。

 元気な独居高齢者が多い一方、介護サービスが利用できなくなり、負担が重くのしかかっている老々世帯を目の当たりにした。「変わりないよ、と言われても何かしら不安はあると思う。日常の変化に気を配りながら訪問を続けたい」と気を引き締めた。

 若い力も動き出した。3人の子を育てる団体職員安田大輔さん(38)は地域活性化に取り組む団体「ミサキどっとCome」に所属し、交流サイト(SNS)で被害状況や復旧に向けた動きに関する情報発信を始めた。被災を受けて、つながりの強さを再認識した。「広く日御碕の現状が伝わり、多くの人が関心を向けてくれれば」と生の動きを発信し続ける考えだ。(佐藤一司、新藤正春)