日本総合研究所上席主任研究員 藤波 匠氏
日本総合研究所上席主任研究員 藤波 匠氏

 山陰中央新報社の米子境港政経クラブ、島根政経懇話会の定例会が17、18の両日、米子、松江両市であり、日本総合研究所の藤波匠上席主任研究員(58)が「なぜ少子化は止められないのか~人口減少時代の地域活性化~」と題して講演した。少子化の要因をひもとき、仕事や家計の問題から結婚、出産を諦めてしまう若い世代への支援の重要性を説いた。要旨は次の通り。

 少子化が加速している。2000年以降、出生数は年率1%ぐらいで緩やかに減っていたが、16年以降に加速し、15年を基準に考えると23年は年率4%という非常に速いスピードだ。

 社会に出る前の18、19歳の調査では、女性の9割近くは結婚意欲があった。しかし20代から30代前半になると、子どもはほしくない、結婚は難しいと考える人が増えた。結婚、出産を諦める人が出てくるということだ。

 最大のポイントは経済、雇用問題だろう。国の調査によると「非婚就業」の継続、つまり、結婚せずに働くという人が極端に増えている。非正規職で特に多く、働くことによって結婚や出産を諦める女性が多い。女性に限らず、所得が下がるに従い、35歳未満の未婚者で「一生結婚するつもりのない人」の割合が増えている。

 ドイツは10年間で合計特殊出生率が1・6ぐらいまで一気に上がった。05年は失業率が11%だったが、大きく下がった。その後、欧州債務危機があったものの実質賃金は跳ね上がり、出生率が上がった。好景気を受けて若い人が結婚や出産がしやすくなっている状況がある。

 経済、雇用環境を改善して結婚、出産を諦めている人たちを支援することが極めて重要だ。多くの若い女性が働く中で、結婚、出産に壁を感じるようになってきている問題があり、ジェンダーギャップを解消していくことも大きな課題だ。(吉川真人)