【鳥取】鳥取市立川町5丁目、児童養護施設・鳥取こども学園に眠っていた明治~昭和期の資料の整理保存を進めた仏教大社会福祉学部の小池桂教授がこのほど、鳥取市内で講演した。明治期の1906年にキリスト教信者らが鳥取孤児院として創設し、苦労しながら経営した姿が浮き彫りになった。
松江市に育児院を開いた福田平治(鳥取市出身)の呼びかけで、尾崎信太郎ら日本キリスト教団鳥取教会関係者が創設した。
資料の整理保存は昭和20年代(1945~54年)までの文書や書籍、写真の計約1100点に絞り、学園の協力を得て進めた。
明治期に子どもたちの音楽隊が資金集めで巡業していたことを示す写真は経営の厳しさを物語る。大正期以降の文書には鳥取市の補助金に関するものがあり、地域社会の理解を得たことが分かる。戦中の社会福祉全集があり、小池教授は「当時の実務責任者の藤野武夫氏は相当な勉強家だったと思う」と推察した。
全国的に社会福祉の歴史の研究はあまり進んでおらず「戦前の社会福祉の多くは民間が担い、経営が不安定だったため記録そのものがそんなに残っていない」と資料の保存整理の重要性を訴えた。講演は鳥取地域史研究会の例会で開かれ、約10人が聴いた。(桝井映志)