次々に打ち上がる大輪の花火が、夕闇に包まれた宍道湖の上空を鮮やかに彩った。「水都・松江」の夏の風物詩、松江水郷祭花火大会が今年も開かれた。花火の総数は2日間で計2万1千発。圧巻のスケールだ。
人混みが苦手で自宅マンションのベランダから眺めるのが恒例だったが、昨年初めて湖岸の有料席で観覧。花火の大きさと湖上に映る幻想的な美しさに魅了され、今年も足を運んだ。
同じ夕闇の水面(みなも)に映える幻想的な明かりでも、こちらは哀愁が漂う。1945年に米軍の原子爆弾が投下された「原爆の日」に合わせ、広島で毎年8月6日の夕方に行われる灯籠流しだ。戦後間もなく、親族や知人を失った遺族や市民が追善供養のため手作り灯籠を川に流したのが始まり。コロナ禍明けで4年ぶりに通常開催された昨年は、多くの市民が原爆ドーム横を流れる元安川に色とりどりの灯籠を流して犠牲者を悼んだ。
広島で勤務した20年ほど前、8月6日の朝は平和記念式典を取材するのが恒例だった。だが、それで終わった気になり、市民の思いがこもった灯籠流しに一度も参加しなかった。今も後悔している。
ただ平和へのメッセージをインターネットで投稿し、広島の施設などで投影する「オンラインとうろう流し」がコロナ禍を機に浸透してきた。これなら山陰からも気軽に参加できそうだ。水面の花火を楽しめるのも平和があってこそだから。(健)