19世紀に米国の消防団員らが社交クラブを設け、レクリエーションとして「タウンボール」というスポーツに興じた。ルールを決めた中心人物がアレクサンダー・カートライト氏。「打者が3回空振りでアウト」「スリーアウトで攻守交代」との内容だった。今の野球の原型である。
その一つに「21点先取した方が勝ち」があった。これに反発したのはプレーヤーではなく、意外にも料理人。試合後は打ち上げパーティーを催す習わしで、日によって終了時間が異なる先取制は、料理の仕込みをいつ始めればいいのか分からない。ある程度、時間が見通せるよう求め、今の9回制に落ち着いたという。
近く日本の高校野球界が劇的に変わるかもしれない。日本高野連が国際大会で主流となっている7回制の検討を始めた。肩や肘など選手の故障防止や酷暑といった視点で論点を整理し、年内にも報告する。
時代に即した方法を探る考えに異論はないが、落としどころが難しい。7回制は選手の出場機会を奪い、高校野球の醍醐味(だいごみ)である終盤の逆転劇は減る。選手を守るのは当然だが、野球の根本に関わる問題だけに性急な結論は避けたい。
料理人のクレームを受け変更する際、カートライト氏は7回制を推したが、多数決で9回制に決まったとの説がある。ゲーム性が損なわれると判断したのか。真偽は不明だが、当時も侃々(かんかん)諤々(がくがく)の議論が行われたと推察する。(玉)