若年性認知症の荒川泰子さん(60)=米子市祇園町2丁目=が行方不明になり、8日で1年になる。昨年8月8日に安来市内で防犯カメラに写った映像が確認されたのを最後に、有力な手がかりはない。今も捜索を続ける夫の勉さん(65)は「自分のように後悔する人をなくしたい」と、認知症の患者の家族が悩みや経験を共有する会合に参加する。
炎天下だった1年前の8月8日が忘れられない。「あの日から後悔しない日はない」と自責の念にかられる。
泰子さんは、米子市の自宅から、実家がある松江市方向に歩き出し、行方が分からなくなった。
勉さんはこれまで島根県内の公民館など約100カ所にポスターを張り、X(旧ツイッター)でほぼ毎日、情報提供を求める投稿を続ける。妻を毎日のように捜すのは、2人の息子のためでもある。「子どもたちにもう一度、泰子に会わせてやりたい」と、自宅の至る所に張られている家族写真を見つめる。
これまで多くのメディアを通じて情報提供を呼びかけてきた。有力な情報がなく「泰子をまだ諦めきれない」とする一方、「やることは全てやったのでは」と自問自答する。
2月に「認知症の人と家族の会」(京都市)に所属し、6月に鳥取県支部代表として総会に参加した。総会では、GPSが付いている機器を持たせなかったことを悔いていると強調。市町村を超えて捜索するSOSネットワークの構築や、全国で行方不明の家族がつながる組織づくりを提案した。
「私のような経験をする人を一人でも減らすのが私の役割だと思っている」。家族の会の会員として新たな一歩を踏み出している。
(林李奈)