記者会見で提訴に至った経緯を説明する原告の保護者=松江市内
記者会見で提訴に至った経緯を説明する原告の保護者=松江市内

 松江市内の認可保育所でトイレに閉じ込められるなどし、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症したとして、元園児の小学女児(8)が、運営法人と保育士に約430万円の損害賠償を求め、5日までに松江地裁に提訴した。提訴は3日付。

 訴状などによると2021年、社会福祉法人しらゆり会(国頭正治理事長)が運営するしらゆり千鳥保育園(松江市北田町)で、担任保育士が当時5歳の原告をトイレに閉じ込めたり、園庭や廊下に立たせるなどしたとしている。原告は同年8月に転園し、その後にPTSDと診断された。

 松江市は21年秋に複数の保護者からの通報を受け、一般監査を実施。トイレに閉じ込めたり、5~10分間立たせたりする行為があったと認定した。虐待などの重大事案はなかったが、不適切保育だと誤解を招く指導だったとし、見直しを求めた。

 原告法定代理人の両親が5日、松江市内で会見し、保育士の行為は虐待に当たると主張。父親は法人に再三、面談を求めたが、応じてもらえず訴訟に踏み切ったとし「司法の場で原告の思いを知ってもらい、子どもの成長を妨げる保育をしたことをしっかり認識してほしい」と訴えた。

 しらゆり会の国頭正久事務局長は「市の監査で認定された事実は真摯(しんし)に受け止め、改善に向け取り組んでいる」と述べた。一方、トイレに閉じ込めた事実は別の園児に対してであり、原告については把握していないと主張。「市の監査や法人の内部調査で虐待の事実は確認されておらず、事実無根で極めて遺憾だ。法人の名誉を損ねる主張で到底承服できない」とした。

(小引久実)