きのうに続いて山田洋次監督の脚本作品から。17日に76歳で亡くなった西田敏行さん主演の『釣りバカ日誌』シリーズ。初めて上映されたのは1988年だった。渥美清さん主演の『男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日』との二本立て。当初は続編の予定はなかったが、ヒットしてシリーズ化。2009年まで計22作品が作られた
1994年公開の7作目『釣りバカ日誌スペシャル』は島根県が舞台に。隠岐や出雲大社、玉造温泉などでロケが行われた。「日本の原風景を有している唯一の地域と思う」「俳優にとって、欠かすことのできないロケーションがたくさんある」…。シリーズ最終作のPRで出雲市を訪れた西田さんは本紙の取材に、島根の印象をこう語っていた
同じ自由人でも、『男はつらいよ』の「寅さん」が露天商なのに対し、西田さんが演じた「ハマちゃん」はサラリーマンだった
「組織の中にいながら自由に生き、上司にもため口。釣りには何はさておき出かけ、愛する家族のためには一目散に帰る。出世主義、成果主義の世の中にあって、サラリーマンたちが共感し、ハマちゃんにヒーローを見たのではないか」。西田さんは人気の理由をそう分析していた
「喜劇のヒーローを演じる役者をぼくたちは失った、という喪失感の中にいます」。訃報を受けた山田監督のコメントだ。寅さんに続いて、ハマちゃんも逝ってしまった。(健)