27日の衆院選投開票が近づいているのに議論が深まらない地方創生の話だ。初代担当相を務めた石破茂首相は交付金の倍増などを打ち出すものの、地方の人口減に歯止めをかけ、東京一極集中を是正する具体的な道筋を示していない
野党も序盤は「政治とカネ」の問題を争点化する戦略で、17日に島根入りした立憲民主党の野田佳彦代表が地方創生に言及することはなかった。もどかしさが募った
安倍政権が2014年に打ち出した地方創生は成果が乏しい。石破首相は9月の自民党総裁選で「再起動」に強い意欲を示した。その後の議論を取材してきたが、過去の検証が不十分な印象だ。政府機関の地方移転がなぜ進まなかったのかは、ほとんど議論にならない
政府の有識者会議のメンバーの一人は、日本や他国の過去の首都一極集中是正策を十分に議論できず、14年に取り組みを始めたことを反省した。今回はどうか。同じ轍(てつ)を踏まないでほしい
その姿勢は地方自治体にも求められる。島根県内の市町村に取材した際、人口減少対策の5カ年計画「総合戦略」の成果や課題、掲げた事業に関連の交付金が充てられたかどうかを過去にさかのぼって質問しても、「(策定時は)担当ではなかったのですぐには答えられない」との声が目立った。国も地方も本気で改善点を考えなければ地方の疲弊は進み、地方創生は単なる選挙対策で終わりかねない。(吏)