「きたはま水族館」の魚を眺める児童たち=5月、出雲市十六島町の北浜小学校(提供)
「きたはま水族館」の魚を眺める児童たち=5月、出雲市十六島町の北浜小学校(提供)

 閉館する前にもう一度訪れたいと思っていた。出雲市内にある水族館。「島根県立宍道湖自然館ゴビウス」ではない。日本海に面した十六島(うっぷるい)町にある北浜小学校の「きたはま水族館」だ

 約50平方メートルの中庭に大小12個の水槽。ハコフグ、イシダイ、タコ、カニ…。5月にはネコザメの産卵も観察できたという。開館は1993年10月。90年に新校舎が建つと、住民や保護者から「地元の魚や漁業を知ってほしい」との声が上がった

 校舎から海まで約10メートル、海抜約3メートル。地の利を生かした。住民が中心となって海水採取のポンプや校舎の下にパイプを通す工事を手がけて完成させた。まさに海が目と鼻の先にあるからできた施設。展示する魚も地元の漁師が持ち込む

 水族館だけではない。北浜小は地元の好意で、専用の岩場「学校島」を持ち、児童は十六島ノリの収穫もする。夏の全校磯活動では採った貝で貝汁を味わい、数年前まで漁船の乗船や定置網を引く漁業体験も続けた。児童数24人。なんと豊かな学校だろう。そんな活動も本年度が最後。来年3月末の閉校が決まっている

 先日、久しぶりに訪れた北浜小の昇降口には、児童が描いた校舎の大きな絵が飾ってあった。赤い屋根、壁一面のいくつもの窓は澄んだ青色に塗られていた。ガラスに映った海の色なのだろう。子どもたちが感じたその青色に、学校と地域が続けた「地方創生」の種を見た。(衣)