プロ野球ドラフト会議で関西大の金丸夢斗投手の交渉権を獲得し、喜ぶ中日の井上一樹監督(左端)=24日午後、東京都内のホテル
プロ野球ドラフト会議で関西大の金丸夢斗投手の交渉権を獲得し、喜ぶ中日の井上一樹監督(左端)=24日午後、東京都内のホテル

 毎年のことながら悲喜こもごもの人間模様を見ると、不条理さも感じてしまう。きのうあったプロ野球ドラフト会議。1巡目指名が重複した選手は球団側の抽選で“働き先”が決まる。意中のチームに入団できる保証はない。せめて指名された本人にくじを引かせてやれないかと思う

 ドラフト制度は59年前に始まった。生みの親は現在の西武の前身・西鉄ライオンズのオーナーだった西亦次郎(1909~74年)。戦績は悪くなかったが、親会社は赤字続き。資金力に勝る巨人や阪神が高額な契約金で有望選手を獲得する中、戦力均衡を訴え、米プロフットボール(NFL)で行っているドラフトの導入を提案した

 同じ悩みを抱えるパ・リーグの全球団からは賛同を得たものの、セ・リーグは1球団のみ。それでも粘り強く説得を続け、実現にこぎ着けた。プロ野球の歴史を変えた人物とも言える

 戦力均衡の「戦力」を「人口」に置き換えると、現在の日本が抱える人口減少問題と重なって見える。東京一極集中は是正されず、地方との格差は広がるばかり。豊かな財政力を背景に東京都は、子育て支援策や高校授業料の実質無償化を進める。これでは人口がさらに吸い上げられそう。地方からすれば不条理な話だ

 対抗するには、くじ引きもなく、若い人に自由に選んでもらえる魅力的な“働き先”づくりが欠かせない。歴史を変える突破口はないものか。(健)