判定にもつれ込んだ準々決勝。入江聖奈を指す「ブルー」の声が会場に響くと、両手で大きくガッツポーズ。メダル獲得が決まってほっとし、目に涙を浮かべた。
トーナメント戦特有の負ければ終わりというプレッシャーは入江にもあった。「ここまで来てメダルが取れなかったらむなしいし、選手村を2日以内に出ないといけないので、すごく怖かった」。不安を払いのけるように、攻め込んでくる相手に対しジャブを繰り出し、右ストレートで決定打を狙うシンプルなボクシングを貫いた。
試合の流れを決めたのは2回。「無我夢中で覚えていない」というほど集中し、果敢に攻める相手の攻撃をかわしながら、ワンツーを顔面にヒットさせ、ジャッジ5人とも入江を支持した。3回は強打を狙う相手にリードを許したが、1、2回のリードを守り切った。
ボクシング女子で日本勢がメダルを獲得は初めて。その偉業の意味は、入江自身もよく理解しており、「5ミリぐらい歴史の扉が開いたと思う。金メダルで全開なので」。女子ボクシング界の歴史を塗り替えるため、頂点に立つことしか頭にない。
(藤原康平)
緊張して 楽しめず
ボクシング女子フェザー級の入江はにこやかにメダル確定の心境を語った。
―試合で意識したことは。楽しめたか。
「シンプルに自分の得意なジャブを当てて、決めパンチで右ストレートのシンプルなボクシングだけを意識した。緊張して楽しめなかった」
―自己採点は何点か。
「50点。今大会最高点です。百点満点のボクシングを準決勝ではしたい」
―ほっとした気持ちもあるか。
「ここまできてメダルを取れないのはむなしいし、選手村から2日以内に帰らないといけないから、それを考えると怖くなっちゃって。ほっとしたところが大きいです」
―日本の女子ボクサーに伝えたいことは。
「私は逆上がりとかできないぐらい運動音痴。スポーツは才能だけではない。自分でもできるんだよということを伝えられたかなと思います」
―鳥取県の両親への思いは。
「応援してくれて支えてくれたのはお父さんとお母さん。帰ったら一番おいしい焼き肉屋に連れて行ってほしい」