鳥取市教育委員会文化財課の細田隆博文化財専門員がこのほど、「日本の城郭石垣の復旧・修理の歴史」をテーマに市内で講演した。かつて城郭復旧・修理で石垣は付属物扱いだったが、1990年代以降、石垣の歴史的価値に光が当たり、より丁寧に扱われるようになったと解説した。
細田専門員によると、明治-昭和期の石垣復旧・修理では、構造物としての安定性が重視され、歴史的価値はあまり顧みられなかった。姫路城の「昭和の大修理」で、58年に天守台の発掘調査が行われ、江戸時代より前の天守台の遺構が見つかったが、出土した礎石を撤去し、コンクリートで基礎を強化したという。
天守など建物に主眼が置かれ、石垣は新しい石材に置き換え、積み方を変えることも珍しくなかった。一方で松江城や彦根城のように石材に目印を記し、元の配石を守ろうとした例もあるという。
歴史的価値が見直されると新たな視点も生まれた。鳥取市は、鳥取城跡で石垣の崩壊を防ぐため江戸時代に築かれた補強用石垣「巻石垣」の価値を考慮して2011年に復元した。
「創建当時の姿に戻す」との従来の一般的な考え方に一石を投じた。同市は鳥取城跡を幕末の姿に復元することを目指しており、細田専門員は「どの時代のどの姿に戻すかが問われるようになった」と説明した。
市歴史博物館・やまびこ館主催の市民講座の一環。約40人が聴いた。(桝井映志)