「木次線を盛り上げたい! 地元にもテツにも木次線を知らない人にも刺さる作品目指し、出発進行!」
漫画編集者の江上英樹さん(66)=横浜市=が、「木次線応援漫画」の制作に向け動きだした。鉄道好きの漫画家・たこぱいそんさん(35)=大阪市=に直接オファーし、一般読者にも「テツ(鉄道ファン)」にも刺さる作品を目指す。木次線のPRを続けてきた江上さんの歩みを振り返るとともに、プロジェクトの内容を紹介する。
(山本泰平)

江上さんは大手出版社・小学館の元編集者。現在は東京都内で漫画の編集企画を手がける合同会社「部活」の代表を務める。
江上さんと木次線との出合いは2010年。鉄道漫画の取材で出雲坂根駅(島根県奥出雲町八川)を訪れ、列車が進行方向を変えながら急勾配を上がる「スイッチバック」に魅了された。「絶対に失われることがあってはならない」と、2022年にスイッチバックの精巧なジオラマを制作。同年に奥出雲町、23年に東京都内で、ジオラマとともに木次線を扱った漫画や写真を紹介する漫画展を開いてPRを続けてきた。



木次線には厳しい現実がある。23年11月にトロッコ列車「奥出雲おろち号」が運行を終え、JR西日本は出雲横田-備後落合間の在り方を沿線自治体と協議したい意向を示している。
存廃論議が進む中、江上さんは「何かできることはないか」と、自身のスキルを生かした漫画制作に光明を見いだした。スイッチバックを中心に木次線の魅力を盛り込み、これまで関心が低かった層の「乗ってみたい」「行ってみたい」を引き出すほか、通向けに細部の描写にもこだわる。
原作協力には、漫画スクリプトドクターのごとう隼平さんや漫画家の松本勇祐さんが携わり、江上さんが編集を担う。取り組みのPRには沿線住民ら有志でつくる木次線応援プロジェクト実行委員会も協力する。
幼少期からの鉄道好きという漫画家のたこぱいそんさんは「1人でも多くの人に木次線を知ってもらい、来てもらえる作品にしたい」と力を込める。

漫画には都会から奥出雲の地に引っ越してきた女子高生と、木次線とともに生きてきた不思議な少女が登場する。少女たちの姿をメインに、沿線の風土や歴史を紹介しながら広くローカル線の未来を照らす作品を目指すという。単行本は約200ページで2025年12月12日(木次線全通記念日)に完成予定。クラウドファンディングで資金を集める。

木次線沿線を訪れた江上さんと漫画家のたこぱいそんさんに、漫画制作の狙いや思いを聞いた。(以下敬称略)
-プロジェクトの準備はいつ始めましたか。
江上「...