女子フェザー級準決勝で英国選手(左)を破り、ガッツポーズする入江聖奈。銀メダル以上が確定した=両国国技館
女子フェザー級準決勝で英国選手(左)を破り、ガッツポーズする入江聖奈。銀メダル以上が確定した=両国国技館

 緊張感高まる試合でもとびきりの笑顔でリングに向かった。ボクシング女子フェザー級の入江聖奈(20)=日体大、米子西高出=は「笑顔のほうが見ている方が喜んでくれるかなと思って」という天真らんまんな性格で決勝まで勝ち上がった。

 大接戦の準決勝。2回にカリス・アーティングストール(英国)の強烈な左ストレートによろめきながらも踏ん張る。最終3回。気迫のこもった右ストレートを打ち込む。勝利のコールに跳びはね「気持ちで頑張った」と喜びをかみしめた。

 選手村で三島由紀夫の「金閣寺」を読み込んでいる。競技のためかと思いきや「すごく文章がきれい。ボクシングに生かせるものはあまりない」という。心理学を専攻し「浮気の境界線」を調べるのは「授業でいっぱい体育のことを学んでいるので、少し離れたいと思った」からだ。五輪後に、街の男女からアンケートをとる構想がある。

 新型コロナウイルスが猛威を振るい始めた昨年3月。アジア・オセアニア予選が行われるヨルダンに向かった。スポーツをすることも懸念される中で「マイナーな女子ボクシングだけど、ポジティブな感情を与えたい」とユニホームの日の丸を握りしめた。

 コロナ禍に心は揺れ動いた。「中止でもいい」と思ったこともあるが、周囲との触れ合いの中で前向きさを取り戻した。1年ほど前、故郷鳥取県の大山登山からの帰途、約20キロを歩いた。車で帰りたかったが、友人から「ここまで来て諦めるの」と言われ、悲観せず前に進むことの大切さを思い起こした。

 五輪1カ月前。子どものころから競技に反対だった母のマミさんから「死ぬこと以外はかすり傷。伸び伸びやってきなさい」と背中を押された。小学生の時にノートの裏に書いた計画は「2020年 20歳で五輪代表に選ばれて金メダルを取る!!」。ボクシング漫画「がんばれ元気」を読んでチャンピオンベルトに憧れた少女が感謝を拳に込め、頂点まであと一歩に迫った。