浜田高校で開かれた島根県高校弁論大会で入賞した生徒=20日、浜田市黒川町
浜田高校で開かれた島根県高校弁論大会で入賞した生徒=20日、浜田市黒川町

 元NHKアナウンサーの山根基世さんは、朗読を手掛かりに「子どもの言葉」を育てる活動に力を注ぐ。ネット上での過激な言葉、上っ面な説明…。「隣の人と心を通わせる言葉」すら育ちにくい今、「言葉を育てることは自分の頭で考える人間を育てること。みんなが語れば世の中は変わると思う」からだという。

 そんな山根さんが願う未来に触れたひとときだったと思う。先日、6校8人の生徒が立った島根県高校弁論大会の審査を担った。それぞれの発表が事前に目を通した原稿とは違った内容に聞こえたのは、言葉に心が乗っかって発せられたからだろう。

 苦手意識があった級友と、図らずも同じ時間を過ごしたことで親友になった経験から「嫌だ、苦手だと思うことは悪いことだとは全く思わない。むしろ好きになるチャンスがあるということ」と呼びかけた男子生徒。世紀の大発見かのようなはつらつとした語り口に、審査席で思わずうなずいた。

 先天性の難病を言い訳にしない母の生きざまに「一人一人が持つ強さはそれぞれ違うからこそ私たちを豊かにし、強くする」と説いた、自身も障害がある生徒の人への温かいまなざし。泣き寝入りしない社会のために性被害未遂を打ち明けた女子生徒の強さも心に響いた。

 体験から出る言葉は聴く人の体に染み込み、勇気づける。誰もがそんな言葉の力を持っていることを、壇上の高校生に教わった。(衣)