看板と柵で封鎖された富益第5踏切=米子市富益町
看板と柵で封鎖された富益第5踏切=米子市富益町

 JR西日本中国統括本部が、山陰両県で遮断機や警報機がない「第4種踏切」の廃止に向けて、地元自治体や住民と協議を進めている。直近では死亡事故が起きた米子市内の踏切1カ所を2月に廃止する。安全面を考慮した措置だが、周辺住民からは利便性の低下を嘆く声が上がっている。

 米子市内で廃止されるのは、JR境線弓ケ浜駅から北西に約1・1キロ離れた富益第5踏切(米子市富益町)。周囲は特産の白ネギ畑に囲まれ、幅約2メートルの細い道とつながっており、24年12月以降は立ち入り禁止の看板と柵で封鎖されている。北西と南東にそれぞれ約140メートル離れた場所に、遮断機や警報機を備えた「第1種踏切」がある。

 事故は2019年6月8日昼に発生。境港発米子行き普通列車と軽自動車が衝突し、車を運転していた米子市内の男性(75)が死亡した。運輸安全委員会の事故調査報告書は、当時の道路からは線路上の列車が見えづらい状態となっており、男性は列車の接近に気付けなかった可能性があると結論付けている。

 JR西と協議した地元自治会は踏切の廃止に同意したが、現場近くで農作業を手がける白ネギ生産者からは不満の声が上がる。踏切に面した建物でネギを袋詰めしていた、ほそだ農園の細田達也さん(61)は地区外在住のため協議に参加できず、看板で廃止を知った。「線路の向こう側に畑があり、廃止で農作物の運搬が非常に不便になった。廃止ではなく、遮断機を設置する対応を取ってほしかった」と残念がる。

 中国統括本部によると、24年現在で第4種踏切は島根県に20カ所、鳥取県に14カ所ある。JR西は過去5年間に島根県で1カ所、鳥取県で4カ所を廃止した。

 同本部安全推進部の担当者は「第4種踏切は事故のリスクが高い。近隣に迂回(うかい)路がある場合は可能な限り通行しないようにしてほしい」と述べた。今後も地元の同意を得た上で廃止を進め、得られない場合は、暫定的な措置として利用者が手で開けて通る簡易ゲートなどを設置するとしている。(中村和磨)