松江市立緑山公園にある戦没者の慰霊塔。市が遺骨の有無を確認する調査に乗り出す=松江市西津田9丁目、同公園
松江市立緑山公園にある戦没者の慰霊塔。市が遺骨の有無を確認する調査に乗り出す=松江市西津田9丁目、同公園

 松江市が2025年度、かつて旧陸軍墓地があった市立緑山公園(松江市西津田9丁目)にある戦没者慰霊塔内に安置されているとされる遺骨の有無の確認調査に乗り出す。戦後80年を迎える中、県遺族連合会などが要望しており、戦争の歴史を見つめ直す契機にする。関連費用を25年度一般会計当初予算案に盛り込む方向で調整している。

 かつて旧陸軍墓地があった緑山公園は、一角に松江に拠点を置いた歩兵第63連隊などの戦没者をまつる慰霊塔(高さ約3メートル)がある。1956年に旧陸軍墓地の一部として国が市に無償譲渡し、61年の公園開設後も残されている。68年から毎年秋の彼岸前後に、市内の団体が慰霊祭と清掃奉仕を行っている。

 戦後80年を迎える中、遺族の伝聞や市が持つ文献を基に、慰霊碑の納骨室に数百以上の遺骨が残されている可能性があることが判明。県遺族連合会と市遺族連合会が昨年12月、納骨室内の遺骨と名簿の存在や保管状態の確認、慰霊などの対応の検討を求める要望書を市に提出した。

 昨夏に事前調査した市によると、慰霊碑の裏側にある納骨室は扉を開けると、モルタルの壁で覆われており、人力での調査が難しいという。機械を使った調査などを検討しており、費用や終了時期は未定としている。

 市遺族連合会の角田一夫会長(80)は「戦後80年がたち、慰霊塔の存在が忘れられている。市民に広く知らせ、戦没者をまつらなければいけない」と強調。市都市整備部の井上雅雄部長は「思いを受け止め、遺族や関係者と話し合いながら対応を決めていきたい」と話した。

 太平洋戦争などで犠牲になった旧陸軍の兵士らが眠る旧陸軍墓地は全国に約80カ所あるとされる。国所有のほか、国が地方自治体に貸与、無償譲渡した墓地がある。慰霊塔などが併設されることもあり、清掃などの維持管理は遺族会などが担っている例が多い。

(堀尾珠里花)