現代の時間感覚のなかで生活を〝営む〟ことの息苦しさ。その困難を、なにげない瞬間の連続の中で細やかに描き込んだ中編が、高瀬隼子の「水たまりで息をする」(「すばる」3月号)だ。

 きっかけは、夫が風呂に入らなくなったこと。たったそれだけのことで、ごく普通だったはずの夫婦が突然、破綻の危機に陥ってしまう。それでも押し流されるように進行していく生活に感情が...