修復作業を終え戻ってきた釈迦十六羅漢図を眺める永見宏樹住職=益田市七尾町、妙義寺
修復作業を終え戻ってきた釈迦十六羅漢図を眺める永見宏樹住職=益田市七尾町、妙義寺

 日本遺産「中世日本の傑作 益田を味わう」の構成文化財・妙義寺(益田市七尾町)に伝わる「釈迦十六羅漢図」が約350年ぶりに修復された。中世益田の領主・益田氏との深い関わりを示す。4月から島根県立石見美術館で開かれる開館20周年記念企画展で展示される。

 「釈迦(しゃか)十六羅漢図」は益田氏19代当主藤兼が、長門国(山口県)の大寧寺から妙義寺に招いた高僧・関翁(かんおう)殊門(じゅもん)が1584年に寺に寄進したとされる。釈迦如来と、仏法を護持する十六羅漢を描いた全17幅の掛け軸で、それぞれ縦64センチ、横33センチ。江戸期の1674年に修復されているという。

 益田市の文化財指定は受けていないが、市歴史文化研究センターの中司健一主任(44)は「雪舟の弟子筋の手によるものと考えられる。江戸期には妙義寺とその末寺が協力して修復しており、寺の歴史を物語る象徴的存在」と歴史的価値を説明する。

 近年、破損や劣化が進んだため、2021年から福岡県筑紫野市の文化財専門の修理工房で3年余りかけて修復した。永見宏樹住職(48)は「寺は2度大火に見舞われたが、その都度、住職が持ち出して現存している。寺の歴史そのものであり、無事に修復が終わってほっとしている」と話す。

 同図は、4月26日に益田市有明町の島根県立石見美術館で開幕する同館開館20周年記念企画展「石見の祈りと美」(島根県立石見美術館、山陰中央新報社など主催)で展示される。(中山竜一)