「一年の計は元旦にあり」と言うように、物事は最初が肝心だ。
自治体にとっての“元旦”は年度初めの4月1日朝と言えそうだ。しかし実質は2、3月に開かれる議会初日での首長の所信表明ではないか。山陰両県知事のそれは紙面で伝えた通りだが、浜田省司高知県知事の言葉に膝を打ち、昔のことを思い出した。
浜田知事は、22年前に島根県総務部長として当時の澄田信義知事に仕え、県財政が苦境の中で行財政改革を指揮した。地方交付税が前年比9%、約215億円削減された2004年度予算案を審議した2月定例県議会の澄田知事の所信表明は、まさに“激烈”と言えるものだった。
最初から「非常事態」「財政再建団体に陥る」などの言葉が続き、最後は歳出削減で「痛み」を強いるであろう県民に対し「ご理解とご協力をお願いしたい」と締めくくった。この議会中には、人手不足の今では考えられない県職員の採用凍結(後に撤回)という方針まで打ち出したのだが、懸念や異論を唱える県議の間で立ち回ったのが補佐役の浜田氏だった。
20年余り経過し知事に就いた浜田氏の所信表明に耳を傾けると、守り、すなわちサービスを減らすだけでは人口減少時代を生き抜けないとの思いがにじんでいた。「賢く縮む」とのキーワードを掲げ、消防の広域化や周産期医療の体制再編に着手するという。山陰両県と共に、目が離せない地域である。(万)