「ご飯食べた?」と聞かれると、日本では食事に誘われたように受け止めることもあるが、韓国では「こんにちは」「元気?」などあいさつ代わりにも使われている。日本と同じように米を主食とする韓国の暮らしで「ご飯」という言葉は、食卓を飛び越えて日常生活に広く用いられる文化のキーワードになっているという▼韓国人女性で松江市国際交流員を務める崔美貞(チェミジョン)さん(25)から聞いた。「ご飯食べよう」は「また会いましょう」、「ご飯が薬」は「バランスの良い食事をしっかり取って健康を維持する」という意味につながる。「朝から晩までご飯に始まり、ご飯に終わる。韓国文化の象徴」と崔さん▼そこまで「ご飯文化」が韓国に浸透したのには、つい半世紀前まで貧しい時代が続いた歴史的背景がある。「食べられてこそ」という強い意識が根っこにあり、日本の「メシが食える」という感覚と響き合う▼豊かになった韓国を一部で支えてきたのが日本からの経済援助だったことは、若い世代にあまり知られていない。戦後補償として1965年に締結した日韓請求権協定に基づく資金支援が韓国経済の成長を後押ししたが、最近の日韓関係を見ていると忘却のかなたにかすむ▼旧日本軍による元慰安婦問題で日本政府の反省と謝罪の念を述べた河野洋平官房長官(当時)談話から28年。ご飯文化が取り持つ縁を相互信頼に発展させなければ。(前)