島根県西部を代表する観光施設「しまね海洋館アクアス」が開館したのが2000年4月。当時、松江から広島へ転勤したばかりで、百万都市・広島市からの集客を目指す島根県の観光キャンペーンを何度か取材した。
翌年、広島県庁に近い広島市の中心部に商業施設が誕生した。広島初の本格的な地下街「紙屋町シャレオ」。周辺の百貨店と差別化を図るため、若い女性をターゲットにしたアパレル店や雑貨屋、スイーツ店が出店。アクアスとは逆に島根から多くの客を集めた。
「シャレオ」の名付け親は島根県職員。「おしゃれ」をもじったもので、全国7587件の応募の中から選ばれた。これも陰陽を結ぶ縁の一つか。
先週、1年ぶりにシャレオを歩いた。コロナ禍を機に飲食店が多く撤退していたが、シャッターを閉めた店舗がさらに増えていた。来週24日にオープンするJR広島駅の新たな駅ビル「ミナモア」に移転する店もあるそうだ。狭いエリアでの店や顧客の争奪戦は、自治体同士の人口の奪い合いを連想させる。
広島県の昨年の人口移動は転出者が転入者を上回る「転出超過」が1万人余り。4年連続で全国最多だった。その広島に多くの若者が転出するのが島根。20年度に県内の高校から進学した3千人余りのうち約500人が広島の大学・短大に進んだ。人材を供給するだけでなく、アクアスのように県外から呼び込む魅力が欲しい。(健)