
―2024年夏は、JR大阪駅に直結した複合商業施設「KITTE大阪」に「出雲しめなわや」をオープンしました。大阪・関西万博の効果も期待できますね。
店舗は、イベントなどを開催できる好立地にあり、地元の産品を売り込むアンテナショップ的な役割も果たせると考えています。インバウンド(訪日客)らでオーバーツーリズム状態にある関西圏の人出を、山陰に呼び込む窓口にもなっていきたいと考えています。
―田部グループのルーツである雲南市吉田町を中心に、中山間地域の活性化事業にも注力しています。
雲南市吉田町では今年4月、田部家の番頭の古民家を改修し、新たに4棟の宿泊施設を稼働させます。町内の「吉田グリーンシャワーの森」も取得し、活用計画を練っています。今後の軸となるコンテンツはたたら操業で、28年までに5、6班の操業班を編成し、吉田で毎週末に操業できるようにする計画です。参加者らが宿泊し、宿泊に付随して食べ物なども消費され、鉄の生産地としても成り立たせながら、経済循環を生み出していく方針です。
―田部竹下酒造の日本酒ブランド「理八」も好評を得ています。
今年5月に英国ロンドンでお披露目をして輸出を始めます。日本酒だけでなく、商社的な役割もして島根県内のさまざまな物品を紹介し、販路を開拓できるよう準備しています。

―グループとして今後の展望についてお聞かせください。
外食事業を中国地方から関西地方まで広げたように、住宅事業などを含め事業エリアを拡大したいと考えています。一方、観光事業はさまざまなエリアから旅行客、訪問者を誘致して稼いでいけるように努めます。
―数値的な目標はありますか。
グループとして50業態、売上高は500億円、雇用は5千人を目指します。過疎化が進む吉田はかつてたたら操業を続けていた時、1万人の人口があり、4千人の人が働いていました。地域にそれぐらいの活気を取り戻したいと考えています。


たたら製鉄の復興や、地域農業や観光などを含めた活気ある里づくりを目指す「たたらの里づくりプロジェクト」は、国から日本最先端の取り組みとの評価をいただき、全国の中山間地域のモデルケースにもなりました。未来を担う皆さんの力を結集し、島根の底力を見せてやりましょう。
田部長右衛門=2010年に(株)田部の社長に就任。
2021年創業の (株)たなべたたらの里では里長を務める。
