各地でサクラが開花し、満開を迎えつつある。松江では3月27日に開花し、4月2日に満開となった。気象庁が発表する開花・満開はどのような仕組みや基準で発表されるのか。開花にまつわる疑問を取材した。
■開花・満開の判断
開花・満開の判断の基準となる木は「標本木」という。
開花は標本木のつぼみのうち、5、6輪の花が開いた状態を、満開は咲きそろった時の約8割以上が咲いた状態を指し、現地の気象台職員が目視で確認する。
標本木は全国に58本ある。例えば東京は靖国神社(千代田区)の境内、京都は二条城(京都市)、大阪は大阪城公園(大阪市)にある。
 多くは国内に広く分布するソメイヨシノだが、高温や低温といった気候の問題で生育できないエリアは樹種が異なる。北海道の一部ではエゾヤマザクラ、沖縄や鹿児島ではカンヒザクラなどで観測している。
松江地方気象台(松江市)は、構内に植わるソメイヨシノを標本木として判断する。
松江では1953年には観測を開始している。当初から気象台構内にある標本木で観測を続けているが、現在の木が何代目に当たるかは不明だ。
全国で観測種目や方法を統一したのが53年で、これ以前の観測記録が残っているかは分からない。
■標本木の代替わり
標本木の老木化などで、花が咲かなかったり、開花時期がずれたりすることがある。そうなると別の木への代替わりが検討される。
では、どうやって後継ぎを選ぶのか。選定は、候補の木が現役の標本木と同じようなタイミングで開花するかを3年ほどかけてチェックする。時期が大きく違わない木かどうかを確かめた上で後継ぎを選ぶ。
松江の標本木は樹齢約40年。ソメイヨシノの寿命は一般に60~80年とされる。代替わりに備え、気象台構内には候補となりうる木が複数植わっている。
 ■開花・満開時期あれこれ
開花や満開の早い遅いを判断する指標を平年値という。現在の数値は1991年~2020年の30年分の観測値から導き出す。松江の平年値は開花が3月29日、満開が4月5日となる。
1953年以降の記録を見ると、満開で一部記録がない年がある。原因は不明だ。
 開花が早かったのは
 (1)3月14日(2021年)
 (2)3月20日(23年)
 (3)3月21日(04年)― だった。
 遅かったのは
 (1)4月13日(1984年)
 (2)4月12日(65年)
 (3)~(6)4月10日(57、63、69、88年)― だった。
 満開が早かったのは
 (1)~(2)3月27日(2021、23年)
 (3)3月29日(18年)
 (4)~(7)3月30日(1990、2002、16、20年)―。
 遅かったのは
 (1)4月18日(1965年)
 (2)4月17日(84年)
 (3)4月16日(70年)―だった。
近年は開花、満開ともに時期が早まる傾向にあり、開花は10年当たり1・6日のペースで早まっている。気象台の担当者は地球温暖化の影響があるとする。長期的な気温の上昇傾向は続いており、この傾向は続くとみられる。
■開花予想
春が近づくと、民間気象会社が開花時期の予想を発表するのが風物詩だ。気象庁も1955年から2009年までは開花予想を発表していた。しかし、10年以降は「当庁と同等の情報提供が民間気象事業者から行われている」として発表を取り止めている。
■サクラ以外も発表
気象庁ではこのほか、ウメの開花(1、2月)、アジサイの開花(6月)、ススキの開花(9月)、イチョウ・イロハモミジの黄・紅葉、落葉(11月)を観測し、発表している。
 松江地方気象台ではいずれも敷地内の標本木で観測する。担当者は「社会的な関心が高い植物について発表している。発表をきっかけに季節の遅れや進み、気候の変化を知ってほしい」と話している。
 (新藤正春)
 






  






