短歌 安部歌子選

 

衿元の寒さに目ざめカーテンを開けて見たればまあ初雪が     安 来 鐘築 京子

  【評】寒さに作者は目覚めた。そして初雪を見たのである。初句から五句まで淡々と 詠(うた)いながら結句の「まあ初雪が」で一首を立ち上がらせた。初雪を目にした時の作者の 驚き、感動が素直に伝わってくる。

カレンダーに付けし印の意を忘る思い出さずにその日は来るも   邑 南 森脇 幹夫

  【評】他人事ではない。簡単なメモでさえも簡単すぎて思い出せない時もある。「そ の日は来るも」に切実な事ながらユーモアを感じてしまう。思い出せなかった事は、大 切な事ではなかったと祈ってい...