「阿蘇くじゅう国立公園」の周辺に建設された大規模太陽光発電所。奥は阿蘇山=2023年5月、熊本県山都町(共同通信社ヘリから)
「阿蘇くじゅう国立公園」の周辺に建設された大規模太陽光発電所。奥は阿蘇山=2023年5月、熊本県山都町(共同通信社ヘリから)

 思い立って大型連休中に三瓶山に登った。西の原登山口から標高1126メートルの男三瓶山頂へ息を切らしていると、後ろから慣れた足取りの男性。緑色の腕章が目についた。

 新緑の草木に癒やされ励まされ110分かけて着いた山頂では、先の男性が「貴重な野生動植物を違法採取から守りましょう」と記されたチラシを配っていた。4月から6月末までは島根県が定める「野生動植物違法採取防止強化期間」。男性は環境省や県が委嘱する自然公園指導員か自然保護レンジャーだったようだ。

 チラシには、カタクリやキンランなど絶滅の恐れがある植物の写真と説明があった。ササユリは数年前に県内の国定公園で大量の違法採取があったと書かれていたが、後で聞けばどの植物もここ十数年は目立つ盗取はないという。地道な啓発活動が一助になっているのだろう。

 それにしても山頂からの景色は格別だ。日本海に中国山地の山々、水が張られた田んぼ…。何より太陽に照り返るのが水田でよかった。なぜなら阿蘇山(熊本県)の例があるから。数年前から、山近くの牧草地で大規模太陽光発電所(メガソーラー)の建設が相次ぎ、景観を害しているという。後継者不足で所有者が土地を売却したためというが、責めることはできまい。同様のケースは全国に広がっている。

 「動植物も景色も盗まれませんように」-。三瓶山頂神社にそう手を合わせて下山した。(衣)