「もうじき新しい動きが出てくるから」。原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定を巡り、旧知の電力関係者から耳打ちされたのが昨年4月。程なく、九州電力玄海原発が立地する佐賀県玄海町が選定の第1段階となる文献調査の受け入れを表明した。
既に調査に入っていた北海道の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村が最大20億円の交付金目当てとされるのに対し、財政的に余裕がある玄海町。脇山伸太郎町長の「適地が見つかるための呼び水になれば」という説明は、核のごみ問題の議論喚起に期待を抱かせた。
とはいえ機運は高まらない。理由は「危険」「迷惑施設」といった悪いイメージが強いこと。益田市の経済界有志グループが受け入れを検討したものの、風評被害を危惧する反対意見を受けて断念した。心配なのは分かる。ただ「どこまで正しく理解しているだろう」と疑問も抱く。
昨年春、核のごみの地層処分について独自に学ぶ松江市内の中学生グループを取材した。この問題を日本全体の課題として同じ世代に認識を広げる必要があると判断。「地層処分のことをもっと教科書で扱ってほしい」とエネルギー政策を担う資源エネルギー庁に要望していた。
きょう5月30日は数字の語呂合わせで「ご(5)み(3)ゼロ(0)の日」。イメージに流されず、地層処分についてしっかり理解した上で賛否を判断しないと、生徒たちに笑われる。(健)