最近、与野党が「就職氷河期世代」を連呼している。バブル経済崩壊の後で就職や賃金に恵まれなかった世代。当方も当てはまり、約1700万人いるとされる。約20年前に小泉政権が進めた非正規社員の規制緩和も大きな要因だ。
40代から50代になり、親の介護や住宅の確保、低年金などさらなる困難が想定される。参院選を前に支援策を強調する各党に対し、交流サイト(SNS)では「今更遅い」との声があふれる。
社会情勢に翻弄(ほんろう)されたのは他の世代も同じだ。後輩から「就職氷河期世代は何が問題なのか」と聞かれ、説明すると「自分は『ゆとり世代』。苦しさは同じ」と言われた。置かれてきた環境は違う。「競争」より「共創」。理解し合うことが大事だ。
他にも日本社会が抱える構造的な問題があらわになっている。「コメは買ったことがない」との失言で農相が辞任すると、後任の小泉進次郎氏は備蓄米を店頭で5キロ当たり2千円程度にすると表明した。消費者目線も大事だが、生産者の生業を守る対策は何か。ある自民党国会議員は父親譲りの「小泉劇場」で本質的な議論がかすむのを危惧した。
憲法は生存権を保障している。一つの断面だけに焦点を当てるのではなく、国民全体の観点に立った政策が必要で実現するのが政治だ。怠れば「格差」と「対立」が生じ、社会の「分断」につながる。選挙目当てのその場しのぎは許されない。(添)