「さっき実は、妻から電話があって怒られました」。更迭された江藤拓前農相が「コメを買ったことがない」と発言した翌日、記者団に語った釈明。「それがどうした」とさらに不満を募らせた人は多かったようだ。
政治家が問題行動を起こした際によく、妻や娘に叱られたと言い訳する。4年前、東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長だった元首相の森喜朗さんが「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と発言して批判されると「昨夜、女房にさんざん怒られた。今朝は娘にも孫娘にも叱られた」と反省の意を示した。
昨年の朝ドラ『虎に翼』の主人公風に言えば「はて?」。そこで免罪符のように女性の血縁者を引き合いに出すのはなぜだろう。“立派な仕事”をしている政治家が妻には頭が上がらない姿を見せて親しみやすさを演出し、同情を買おうとしているのか。
他意はないにしろ、わざわざ妻を持ち出すことに、家父長制的な家族像を暗によしとしている意識が透けてみえるようだ。このように感じた人は多く、交流サイト(SNS)では「それ、言う必要あるの?」と批判の声が多く上がっていた。
仕事のトラブルで先方に謝罪、申し開きをする時「家族に怒られました」「上司に叱られました」と言うのは筋違いだ。それを分かっているから言わないのが一般的なのだが、前農相にはその想像力も見識もなかったのだろうか。(衣)