2冊の手記を復刻・合本して発行した「酒巻和男の手記」を手にする酒巻潔さん
2冊の手記を復刻・合本して発行した「酒巻和男の手記」を手にする酒巻潔さん
1960年ごろの酒巻和男氏
1960年ごろの酒巻和男氏
2冊の手記を復刻・合本して発行した「酒巻和男の手記」を手にする酒巻潔さん 1960年ごろの酒巻和男氏

 1941年12月の真珠湾攻撃に参加し、太平洋戦争の日本人捕虜1号となった旧海軍少尉、故酒巻和男氏の手記2冊と関連資料をまとめた本が今夏、改めて出版される。開戦80年となる節目に、酒巻氏の長男が未公表の写真や書簡を提供した。長男は「未来を担う若者に一人でも多く読んでほしい」と話している。

 酒巻氏は現在の徳島県阿波市出身。真珠湾攻撃の先陣として特殊潜航艇で出撃、捕虜となり、米国の収容所を転々とした。戦後帰国し、トヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)に入社。ブラジル現地法人社長などを務め99年に81歳で亡くなった。戦後に「俘虜(ふりょ)生活四ケ年の回顧」と「捕虜第一号」の手記2冊を出した。

 今回の本のタイトルは「酒巻和男の手記」。昨年8月、徳島県美波町の元高校教諭、青木弘亘さん(79)らが2冊の手記を復刻・合本して発行したものに、講話の草稿など新たな資料を付けて増補版として出版する。

 本には、「生きて虜囚の辱めを受けず」との戦陣訓が徹底された時代に捕虜となった酒巻氏の体験や葛藤などがつづられている。

 戦後の講話では、日本が国際社会で共存共栄するためには「相互理解を深め、信頼関係を強化すること以外にない」などと話していた。

 酒巻氏の長男潔さん(72)=愛知県豊田市=は父から戦争体験を聞いたことがなく、昨年の復刻版で初めて手記を読んで心を打たれ、自宅にあった未公表の資料を青木さんに提供した。

 潔さんは「父は死を望むほどの絶望からはい上がり、日本の戦後復興に命をささげようと他の捕虜を説得した」と指摘。「考え抜いて言葉を尽くした姿に感動した」と話す。青木さんは「酒巻氏の思慮深さを感じ、学んでほしい」と語る。

 本は今回、6千部発行し、1冊1320円。出版元は徳島市のイシダ測機。問い合わせは同社、電話088(625)0720。