東京パラリンピック陸上男子100メートル(脳性まひT33=車いす)に出場する米子市在住の安野祐平(31)=楽志=が22日、どらドラパーク米子東山陸上競技場で練習を公開した。家族やトレーナーの後押しを受けて出場を決めた大舞台でのレースを約1週間後に控え「たくさんの方々に支えられてここまで来た。感謝の気持ちを込めて走る」と気を引き締めた。
1990年に体重669グラムの超未熟児として誕生し、生まれつき脳性まひと聴覚障害がある安野。陸上を始めたのは県立鳥取聾(ろう)学校高等部に進学してからだった。車いすマラソン大会に出場した際、競技用車いすを手際よく操作する選手の姿に憧れ、両親とともに国内外のマラソン大会に参加するようになった。
遠征先では、競技だけではなく趣味の列車撮影なども楽しんだ。穏やかで人なつっこい性格といい、母親の恵子さん(56)は「普段の生活では、すごいことをしそうな雰囲気は感じない。楽しみながら続けてきたからこそ結果が出せた」と振り返る。
2014年からは後にトレーナーとなる理学療法士、石丸知さん(41)の指導を受けるようになり、東京パラリンピック出場を目指すようになった。専門知識に基づいた練習で力を伸ばし、15年の日本パラ選手権、ジャパンパラ大会の800メートル(T33)で日本新記録を樹立した。
国内トップレベルの大会で活躍する息子を後押ししようと、父親の恭司さん(63)は勤めていた会社を早期退職し、恵子さんと2人で福祉用具のレンタル事業などを手掛ける会社「楽志」を設立し、コーチとして支える環境を整えた。
東京パラリンピックでの目標は20秒を切ってメダルを獲得すること。22日の練習では20秒68の好記録を出して順調な仕上がりぶりを見せた。石丸さんは「重い障害があっても努力すればパラリンピックに出場できるということを、多くの人に知ってもらいたい」と話した。
(奥原祥平)