二人三脚で店を切り盛りしてきた木村勝彦さん(左)と妻の啓子さん=松江市南田町、きむら新月堂
二人三脚で店を切り盛りしてきた木村勝彦さん(左)と妻の啓子さん=松江市南田町、きむら新月堂
8月末で閉店する「きむら新月堂」=松江市南田町
8月末で閉店する「きむら新月堂」=松江市南田町
二人三脚で店を切り盛りしてきた木村勝彦さん(左)と妻の啓子さん=松江市南田町、きむら新月堂 8月末で閉店する「きむら新月堂」=松江市南田町

 終戦直後の1945年から松江市内で営み、大判焼きが人気の「きむら新月堂」が31日に閉店する。親から子へと受け継がれた味が客に愛された。76年の歴史を閉じるのを前に、店主の木村勝彦さん(79)、啓子さん(75)夫婦は「お客さんには本当に感謝しかない。残りの時間、少しでも恩返しができるよう頑張る」と語る。 (金津理子)

 勝彦さんの父で、大阪で菓子作りを学んだ故新一さんが古里に帰り、西茶町に開いた和洋菓子店が始まり。10年後に大判焼きも始めた。勝彦さんは東京の菓子店勤務を経て20代半ばで帰郷。啓子さんと出会い結婚し、2人で店を手伝った。75年に大判焼き中心の殿町店を始め、西茶町店は閉じた。殿町店は珍しい大判焼き専門店として繁盛し、2001年に今の南田町に移った。

 大判焼きは夫婦二人三脚で出来上がる。大粒の小豆を使い、炊き込みから味付けまで手作り。早朝から2時間半以上かけて炊くのは勝彦さんの役目で、あっさりとした味に仕上げる。

 業者のミックス粉ではなく、独自調合した秘伝の粉で作った生地でふわふわに焼き上げるのは啓子さん。出来たてを食べてもらうために作り置きはしない。「若い頃は焼くのが恥ずかしくて腰を曲げながら隠れて焼いていた」と振り返るが、客と話すのが楽しかったという。

 菓子の流行が変化する中で大判焼きを焼き続けたのは「菓子の原点だと思うから。庶民的だし食べやすい」と勝彦さん。高齢になり「何度もやめようと思ったけど、お客さんに寂しがられて続けた。この繰り返しだった」が、比較的客が少ない8月のうちに静かに閉じることを決めた。

 20年通う近所の常連女性客(92)は「もう立ち寄って話ができんようになるのは寂しいわ」とこぼした。

 午前9時半~午後6時。1個130円の大判焼き(つぶあん、クリーム)のほか、たこやきなども販売する。店は南田町の国道431号沿い。電話0852(26)6060。